炎症性腸疾患外科 診療案内クローン病の治療
クローン病
本邦における患者数
本邦におけるクローン病の患者数は平成 25年度には 39,799 人と報告され、著明に増加しています。
クローン病の特徴
- 腸のどの部分にも病変が発生しますが、最も多い場所は小腸と大腸の境目付近(回盲部)です。約半数の患者さんでは肛門病変(難治性の痔瘻)を伴います。
- 病変がスキップするように飛び石状に起きて、内視鏡や造影検査で縦走潰瘍、敷石状所見が認められます。
- 腸の全層に炎症が及ぶため、腸が狭くなったり(狭窄)腸に穴が開いたり(穿孔)、お腹の中に膿を持ったりすることがあります。
- 病変部位を顕微鏡でみると非乾酪性肉芽腫という特徴的な所見があります。
検査が難しかった小腸もより確実に、楽に検査ができるようになりました
カプセル内視鏡による小腸病変の検索
本物のカプセルを飲む前には崩壊性カプセル(パテンシーカプセル)で通過状態をレントゲンで確認
ダブルバルーン小腸内視鏡
小腸潰瘍による狭窄もバルーン拡張で治療できるようになりました。
小腸内視鏡による狭窄の診断とバルーン拡張
クローン病の縦走潰瘍
ステップアップ療法とトップダウン療法・リセット療法
従来、クローン病の治療は、病態の重症化に従い、治療強化をしていくステップアップ療法が行われてきました。しかしながら、内科治療で強力な有効性を持つ薬物が開発されて病態の程度にかかわらず,はじめから最も強力な薬剤を選択する,というトップダウン療法も選択肢となりました。また、内科治療では制御しにくい病巣を手術で切除してしまってから強力な治療を行い長期の寛解を維持しようというリセット療法も行われるようになりました。
クローン病腸管手術症例の年次推移(延べ)
クローン病手術における課題への取り組み
再手術の予防(吻合部付近に再発、再燃しやすい)
- 吻合方法の工夫 Kono'S 吻合
- 術後内科治療強化
腸が短くなること(短腸症候群)の予防
- 小範囲切除
- 狭窄形成術
初回手術でも再手術でもなるべく低侵襲で
- 内視鏡によるバルーン拡張
- 腹腔鏡手術
腸のつなぎ方の工夫
腸と腸のつなぎ目を『吻合部』といいます。クローン病では、この吻合部近くの腸に炎症が起きてくることが知られています。炎症が起きないようにするために手術後も内科治療が必要です。
手術によって腸が短くなって栄養の吸収ができなくなることが無いように、『なるべく少ない範囲での腸切除』して、再手術の予防を行います。
Kono-S吻合
手術による吻合部再発・再手術防止にKono-S吻合を取り入れ、積極的に予防に取り組んでいます。Kono-S吻合では通常の吻合法に比べて再手術率が低いことが証明されています。
手術で腸が短くなるのを予防する
クローン病の飛び石病変を一括で切除してしまうとどんどん腸が短くなり短腸症候群(食事をしても腸から栄養の吸収が十分にできない状態)になるためなるべく長く小腸を温存します。
さまざまな手術(狭窄形成術)で腸を切らずに狭窄を解除します
腹腔鏡手術率も増加しています
クローン病における手術率は高く、発症後5年で38%が手術を行っています
臨床症状がなくても内視鏡的再燃は1年で3割起きています 術後の内科治療が重要です
吻合部再発・再手術防止に手術後の内科治療(TNF α 抗体)は有効です
total | with TNF - α | with TNF - α | |
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3y | 24.2% | 17.7% | 32.5% |
5y | 38.0% | 24.1% | 49.5% |