消化管外科 診療案内胃の病気と治療
胃の病気と治療
1.胃とは

胃は食道から続き十二指腸につながる管腔臓器で、みぞおちの辺り(心窩部)にあり、食物の殺菌や貯蔵、温度調節や消化といった、複数の役割を担っています。
胃の壁は内側から、粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜の順に合わさって構成されています。胃の入り口は噴門、出口は幽門と呼ばれ、飲食物や胃液・腸液の逆流を防いだり、腸への輸送の速度を保つ役割を担っています。
2.診療の対象となる胃の疾患
当科では、胃の様々な疾患の治療を行っています。代表的なものとして、胃がんと胃消化管間質腫瘍(GIST)があります。
3.胃がんの治療
胃がんは日本人に多くみられるがんの一つで、胃粘膜の細胞が何らかの原因でがん化し、無秩序に増殖することで生じます。早期に見つかり内視鏡的切除を行えることも増えてきていますが、症状なく進行し、内視鏡治療では不充分な状態で発見されることも少なくありません。
当科では、診断がついた時点での進行の度合いや患者さんの健康状態をもとに、手術だけではなく抗がん剤治療を含めた様々な治療方法の中から最適な治療法を、患者さんとよく相談したうえで選択しています。
1 ロボット支援下手術
胃がんに対するロボット支援下手術は、腹腔鏡下手術よりも合併症を減らすことができるという実績が報告され、2018年4月から保険診療として受けることが可能になりました。さらに、腹腔鏡手術よりも生存率の向上が得られるとも報告されています。当科では保険承認に先駆けてロボット支援下手術を開始し、現在も可能な限り、ロボット支援下手術を行っています。
また、近年増加傾向にある食道胃接合部がんや胃上部のがんに対する手術では、下部食道括約筋や噴門(食道と胃との境)を切除するために術後の逆流が生じやすく、重度の食道炎や肺炎に発展することがあり問題となってきました。当科では、術後の生活の質も考慮した、つなぎ目に逆流防止機構を加える吻合法で手術を行っており、現在もよりよい方法の開発に向けた取り組みを行っています。


2 進行胃がんに対する治療
切除可能であるものの進行度の高い胃がんに対しては、抗がん剤治療を手術前後に行うことで、治療成績の向上を目指しています。
また、遠隔リンパ節や肝臓への転移、腹膜転移、腹水細胞診陽性などのため切除不能と診断された進行がんや、手術後の再発に対しても、免疫チェックポイント阻害薬や、分子標的薬を組み合わせた化学療法を積極的に行っています。効果が得られ、切除可能な状態となった場合は、コンバージョン手術(conversion surgery)を行うことによって完全な治癒を目指しています。
3 胃消化管間質腫瘍(GIST)の治療
消化管間質腫瘍(GIST)は年間に10万人に対して1~2人程度に発生するとされる比較的まれな疾患ですが、胃はGISTの最も発生しやすい臓器です。大きさや増大傾向などにより、手術の適応となる場合があります。
手術では腫瘍を含む胃を部分的に切除しますが、当科では手術による胃の変形を最小限にするため、腹腔鏡と胃内視鏡とを併用して腫瘍の位置を確認し、胃壁の切除をできるだけ少なくする方法(laparoscopy-endoscopy cooperative surgery; LECS)で行っています。最小限の範囲でくり貫いた外壁(漿膜筋層)の孔を通して腫瘍を粘膜とともに腹腔へ引き出し、切除するのと同時に縫い閉じます。この方法により、胃壁を開くことなく切除が完了し、胃の変形が最小限になるとともに清潔性も担保することができます。
